SESとは何か。契約の中身と、給与が決まる仕組み
更新日 2026-09-25(読者に見える文字が変わった日。数字の確認日は本文に)・誰がどう調べているか
台帳の数字は63社の公式サイトを読んで数えたものです(2026-09-14時点)。求人票の数字や、一般に言われていることの整理は、本文でそのつど出どころを書いています。
目次
SESは「エス・イー・エス」(エスイーエス)と読み、System Engineering Service の略とされています。求人票では「SES」とだけ書かれていることが多く、何を売っている契約なのかが書かれていないことがほとんどです。ここは、そこから書きます。
「SES企業」とは、この契約で技術者を客先に出している会社のことです。自社でサービスを作って売る会社(自社開発)と違い、売っているのは技術者の作業時間です。
そのため、同じ「ITエンジニアの求人」でも、SES企業の求人と自社開発企業の求人では、働く場所も、仕事の決まり方も違います。この記事は、その違いがどこから出てくるのかを、契約の形から順にたどります。
SESが売っているのは、成果物ではなく作業
SESは準委任契約です。契約で約束しているのは「このシステムを完成させます」ではなく、この技術者が、この期間、この作業をします、です。
この一点から、ほかの違いがすべて出てきます。
| SES(準委任) | 請負 | 派遣 | |
|---|---|---|---|
| 売っているもの | 作業 | 完成したもの | 労働力 |
| 完成しなかったら | 作業していれば債務は果たしている | 引き受けた側が責任を負う | 派遣先が指示した範囲で働けばよい |
| 指示を出すのは | 自社の上司 | 自社の上司 | 派遣先の担当者 |
| 必要な許可 | 不要 | 不要 | 労働者派遣事業の許可が要る |
表の3行目と4行目を並べて見てください。SESと派遣は、働く場所が客先という点では同じに見えます。違うのは誰が指示を出すかと、許可が要るかどうかです。
偽装請負になるのは、指示系統が崩れたとき
SESで働いていて、客先の担当者から直接「これをやって」と日々の作業指示を受けている状態は、契約の形と実態がずれています。これが偽装請負と呼ばれる状態です。派遣の許可を取らずに、派遣と同じことをしていることになるためです。
働く側から見て、境目になるのは次のような点です。どれも契約書ではなく、毎日の様子で判断できます。
- 作業の指示を、自社の責任者ではなく客先の担当者から直接受けている
- 客先の朝会に出て、そこでタスクの割り振りが決まる
- 残業や休暇の可否を、客先の判断で決められている
- 客先の指揮命令系統の中に、自分が組み込まれている
この状態が悪いのは、契約違反だからだけではありません。責任の所在があいまいなまま、労働時間や業務範囲を客先に決められる形になるためです。
単価と給与のあいだに、何が挟まっているか
SESでは、自社が客先から単価を受け取り、そこから給与が払われます。ここに何段の会社が挟まっているかで、手元に残る額が変わります。
- 発注元
- 元請け
- 一次請け
- 二次請け
- 所属会社
- 自分
段が増えるほど、同じ作業でも受け取る額は下がります。これは能力の差ではなく、どの位置にいるかの差です。
台帳63社の公式サイトを読んだ中には、多重下請けを挟まないことを自分から書いているサービスがありました。それを売りにしているということは、挟まっているのが普通だと業界側も見ているということです。
単価そのものを公開しているサービスは、ほとんどありません。こちらでも数えられませんでした。給与から逆算するしかないのが現状です。
「常駐かどうか」は、公式サイトにほとんど書かれていない
登録する前にいちばん知りたいのは常駐になるのかどうかですが、ここは調べても出てきません。台帳63社の公式サイトを機械で探したところ、「客先常駐」という語を使っていたのは5社だけでした。
しかも5社の使い方が、それぞれ違います。
| 社 | どう書いているか |
|---|---|
| エンジニアルーム | 「エンジニアルームでは客先常駐案件が大半を占めております」(自分から書いている) |
| キャリアカンパニー | 勤務スタイルの欄に「客先常駐勤務、自社内勤務」 |
| Midworks | よくある質問に「客先常駐案件とはなんですか?」(説明であって、自社の案件の話ではない) |
| レバテックダイレクト | 求人票の見出しに「客先常駐無/在宅可」(常駐が無いことを売りにしている) |
| 社内SE転職ナビ | 記事の見出しに「客先常駐を卒業して」(記事の話であって、案件の話ではない) |
自分の案件が常駐中心だと書いているのは1社だけです。残りは、説明・売り文句・記事の見出しでした。
「書いていない」は「常駐ではない」ではありません。書いていないだけです。登録する前に自分で聞くしかない項目で、こちらが台帳から埋めることはできません。
聞くとしたら、この形が具体的です。
- いま紹介できる案件のうち、客先常駐は何割か
- 常駐先が変わるとき、次が決まるまでの間はどうなるのか
- 指示は誰から受けるのか(自社の責任者か、客先の担当者か)
SESで身につくものと、身につきにくいもの
「SESはやめとけ」という言い方がありますが、参画する現場によって中身が違いすぎるので、ひとまとめには言えません。分けて見たほうが実際に近くなります。
身につきやすいもの
- 大きなシステムの一部を、決められた手順で確実に作る力
- 客先の人と仕事を進める力。立場の違う人と話す経験は積みやすい
- 現場ごとに違う道具・体制に慣れる速さ
身につきにくいもの
- 何を作るかを決める経験。決まっているものを作る側に入ることが多い
- 技術の選定。使うものは参画前に決まっている
- 一つのプロダクトを長く育てる経験。参画が終わると離れる
自分に足りないのがどちらかで、次の行き先が変わります。「SESを辞める」ことが目的になると、同じSESに戻ることになります。
客先常駐をやめたいとき、行き先は3つに分かれる
台帳63社を分けると、受け取るものが違う3種類になります。同じ「おすすめ◯選」の表に並んでいますが、別のものです。
| 行き先 | 何が変わるか | 台帳から |
|---|---|---|
| 事業会社の社内SE | 発注する側に回る。常駐が無くなる | 社内SEの求人を扱うサービス |
| 自社開発・事業会社の開発 | 作るものを自社で決める | 経験者向けの転職エージェント |
| フリーランス(業務委託) | 雇用ではなくなる。社会保険も報酬の受け取り方も変わる | フリーランス案件のサービス |
サーバーやネットワークを見てきた人は、インフラエンジニアの求人を扱うサービスを別に分けてあります。運用・保守の経験は、職種名が変わっても持ち出せます。
スキル不足が不安で動けない場合の分け方は、SESを辞めたいときに選べる3種類にまとめています。
年収は、求人票を数えるとレンジで見える
「SESの平均年収は◯万円」という数字は、何を母数にしたのかが書かれていないことがほとんどです。こちらは平均を出す代わりに、転職サービスの公式サイトに実際に出ていた求人票を職種別に数えました。出どころは1社(レバテックダイレクト)の公式サイトだけです。ほかの会社の求人票は入っていません。「転職サービス全体の相場」ではありません。
結果は職種別の年収レンジにあります。中央値と、下限のいちばん低い値から上限のいちばん高い値までの幅を、件数つきで載せています。
求人票の提示額であって、決まった年収ではありません。そこも合わせて書いています。
確かめられること・確かめられないこと
確かめられることは、台帳63社の公式サイトに書いてあったことだけです。読んだURLと確認日を各社のページに載せています。
確かめられないこともそのまま書きます。
- 単価と給与の比率は、どのサービスも公表していません
- 何次請けの案件かは、求人票にはほぼ書かれていません
- 偽装請負の境目として挙げた点は、判断のための目安であって、こちらが個別の会社を判定したものではありません
- 「身につく・身につきにくい」は、現場によって変わります。数えた数字ではありません
次に見るもの
- SESから転職する人へ — 行き先4つと、求人票・台帳で確かめたこと
- SIerとは何か — 会社の種類と、SESとの関係
- 職種別の年収レンジ — 求人票を職種ごとに数えたもの
- 「システムエンジニアはやめとけ」の中身 — 求人票で確かめた年収と、職種名だけでは分からない担当
- SESを辞めたいときに選べる3種類 — スキル不足が不安なとき
- 台帳の全63社 — 種別・費用・許可番号を1社ずつ
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